日々、すきなこと。

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初音ミクの曲紹介No.7 ワガママ彼女/そふぁ

2017/01/21投稿曲(niconico

ゴリッとしたバンドサウンドが心地いいです。

ただ間奏が少しクドイ気がします。格好いいんですけど、もうちょっとシンプルにまとめればいいのに。

バンドメンバー紹介みたいな各パートの聞かせどころを作る意味がないと思います。

何回も聴くときに鬱陶しく感じます。格好いいとは思いますけどね。 

 

 

”ロックンロールレディ”

 

 喫茶店に入ると、入口近くの席から強烈なタバコの臭いが漂っていた。

 

「おーそーいー」

 

席に着くなり、向かい側に座るA子がタバコに火をつけながら不機嫌そうに言った。灰皿にはタバコの吸殻が6本程くしゃくしゃになって置かれている。

 

「ごめんねー。レポートまとめるのに時間かかっちゃって」

 

閉店間際の喫茶店には私たち以外の客はいなかった。暇そうにテーブルを拭いているウェイターに注文をすると、「聞いてよー」という風にA子が身を乗り出してきた。

 

「見て、これ。これ、見て」

 

A子は細い首に掛けてあるネックレスを指先でつまんで、プラプラと見せてきた。

A子にしては地味だが、かわいいデザインをしている。

 

「おー、かわいいねー」

 

「かわいい? って言うかー、地味じゃね?」

 

A子はタバコをぐりぐりと灰皿に押しつけると、スマホを手に取り、「これ!」といった感じで私に向けると、気だるげにため息を漏らした。

 

「誕生日プレゼントに通販はなくね?」

 

A子のスマホを持つ腕がプルプルと震えている。

 

「しかも、1万5千とかなくない? 貧乏人かよ。まぁ、金持ってないヤツだけどさー、彼女の誕生日だよ? バースデー。もっと何かあるだろ、マジでー」

 

突きつけられたスマホに向かって、「うーん」と苦笑いをしていると、ウェイターが毒蝮パフェを運んできて、愛想のいい笑顔を向けてきた。

感じのいい人、なんて思いながらパフェを口にする。

 

「たしかに通販はないかなー」

 

うんうんと頷くA子は腕を引っ込めると、「パフェちょーだい」とおねだりしてきた。

それを相手にせずに生クリームを一口パクリ。

 

「でも、彼、今大変なんじゃないの。会社つぶれちゃったんでしょ。貰えただけでよかったじゃない」

 

パフェにのっている抹茶アイスを少しずつ食べていく。

窓の外を見ると、街行く人たちが疲れた顔で都会の荒波に流されていた。

A子は椅子に深くもたれこみ、天井を仰ぎ見ると、うなだれた。

 

「最近不安になってきちゃってさー。このままでいいのかなーって。アイツだって、アタシにかまってる暇なんて全然ないんだよ。昨日は時間作ってくれたみたいで会えたけど、なんかすっごい疲れた顔してんの。アタシと一緒にいても楽しくなさそうだしさ。アタシは会えると嬉しいんだよ。でも、アイツはどうなんだろう。プレゼントもこんなだし。いや、わかるよ。状況が状況だし、ワガママ言ってらんないって。でもさー、将来的なこともあるじゃん。アタシ、アイツとの未来も考えてたんだよ。はぁ、どうしよう、ホント」

 

ここ数ヶ月で何回目だっけ、この話、と思いながらパフェを食べすすめていると、A子が急に泣き出した。これは、なだめるのに朝までかかるパターンだ。

うわぁ、明日、予定あるんだけどなーと思いながら、ぐずぐずと鼻を啜るA子の頭をポンポンと優しく叩く。

 

「ウチ来ていいから、泣き止みなさい」

 

A子は小さく「うん」と頷いた。

愛想のいいウェイターが興味深そうにこちらを視ていたので、作り笑顔をしてお会計を頼んだ。

 

外に出ると、冷たい風が吹いてきて、私よりも小柄なA子が身体を寄せてきた。

A子を見ると、ニコリとした笑顔で見上げてくる。

ホント、この子のこういうところに弱いな、私は。と思いながら、足早に家路につく。